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世界的に有名なイラストレーター天野さんが、78枚をデザインした一品です。
そのオリジナリティ溢れる世界は、占具というより、イラスト集であり観賞用カードの最たるものです。

当時、ウエイト版(ライダー版)に慣れてきた頃で、あくまでもオーソドックスな路線で勉強していました。ネット上には海外のさまざまな目を引くカードが溢れていましたが、どうにも敷居が高くて手が出ませんでした。
そんな中、立ち寄った日本国内の書店で、指南書(エミール・シェラザード著 わかりやすいです)とセットになったこちらのカードを発見。
直接手に取ることができたので、購入してみました。
最初から覚悟していました。
この思い切り芸術性の高いカードが、直感的占いの道具として自分に使いこなせるようになるのはいつの日か… そんな日が遠いことはわかっていました。
それでも購入したのは、独特の世界観を持つ天野さんが、タロットの世界をどのように表現するのか、天野さんの感性と綿々と受け継がれてきたタロットの力が融合した時、どのようなことが起こるのか、見てみたかった、という理由です。
結果、両者が混ざり合った独特の世界が展開されています。そういう意味では大当たりです。
基本的な読み取りは、ウエイト版(ライダー版)と同一なので、カードよりも、付属の指南書の方が使いやすかったりします。
今回はカードのご紹介のみですので、指南書は割愛させていただきます。(指南書だけの販売はありません)

幸せをつかむタロット占い―天野喜孝オリジナル・カード78枚
左から、ワンド、ペンタクルス、ソード、カップになります。
2~10はこれらの図柄が必要数配置されているシンプルなものです。
トランプと同じですね。
ですので意味に慣れた人じゃないと、ピーンとくるのは難しいと思います。
コートカードはユニークなので、ここでは各スートから一枚ずつ選んだコートカードをご紹介します。

優しげな女性がカップを手に佇んでいます。
このカードの中では比較的落ち着いた色合いのピンク色の衣が愛情の象徴を際立たせているようです。
目は閉じられており、万物への愛情に思いを馳せているように感じます。
力強さよりも、しなやかな強さを持った慈悲深い菩薩のような姿として描かれています。足元に伸びる青と黄色の淡い色味で、彼女の影を表現しています。
もしくは、今生きている生命の最前線を思わせます。
逆位置になると、彼女の上半身が重力に従ってずっしりと下に垂れてきており、重すぎる愛情や偏った独りよがりの感情、といったイメージを受け取ります。


こちらはなかなか面白い構図になっています。
コートカードはだいたい一人の人物が描かれることが多いのですが、こちらには二人の人物、もしくは一人の人物の別の顔が描かれています。
ソードのスートですから、まさに剣の持つ力の両面性、諸刃の剣のイメージであります。
または、ペイジというまだ成熟し切っていない年代の者が手にした剣への憧れと責任の双方を示しているようでもあります。
葛藤が見え隠れするこのカードは、普段は右側のような意思の強い人物を表し、逆になると左側の白っぽい弱気さ、不安をはらんだ人物が浮き上がってきます。
まさに全てを手に入れて、満たされた王、という姿で表現されているのが、このカードです。蓄えた髭、重厚感のある衣服、飾り立てられたペンタクルス。
全てが充足している、力ある王です。
しかし、その目は絶対的な自信を持ってこちらを見つめてはいません。
彼はここに至る迄に、どれだけの苦難を超えてきたのでしょうか。
今、ここにい続けるために、どれだけの努力と猜疑心を抱えているのでしょうか。
彼の表情(天野さんのカードなので、人物の表情がカードの印象を大きく左右します)からは、心底満足している様子は伺えません。
逆位置になると、その猜疑心が強く表に出てきます。

ワンドは生命力の象徴です。
まだ若いワンドのペイジは全ての生命を愛し、愛されているように見られます。
彼に寄り添う鳥のような生物がいます。
彼が抱えているのは植物のように見えます。
また、右下にはその彼を時と見つめる人の顔があります。
生気あふれる若々しい力にあふれた人物の象徴ですね。
ただ彼の顔にはどこか憂いがあり、また、どこか鋭さがあります。
その力は裏を返せば、自暴自棄や他者への暴力になりかねない危うさを含んでいます。彼の力が確固として成長に向くには、まだ若すぎる人物を思わせます。

特徴的な世界が色濃く出ているのが大アルカナです。何枚かピックアップしてみます。

幸せをつかむタロット占い―天野喜孝オリジナル・カード78枚
単色で描かれたこちらの一枚。吊るし人・吊るされた人(ハングドマン)です。
わかりにくいですが、足の向きはウエイト版と同様、組まれています。
彼はいじっと耐えているよいうでもあり、祈っているようでもあります。
彼の頭上に続くのは、引きずられた後なのか、流れる血なのか。
背景は砂漠のようで、彼を見守るものはいません。
そんな過酷な中にあって、彼の表情からは、わずかに穏やかさを感じます。
これで良い、なすがままに、今はこうすることが最善なのである、という悟りのような面持ちです。
きっと、逆位置となった時、彼は絶妙なバランスの上に立ち、切り抜けていく妙策を授けてくれるでしょう。

天秤を持つことが多い、正義(ジャスティス)のカード。
このタロットでは、二本の虹の上に腰掛け、自らが吊るされた天秤の上に乗る女性が描かれています。
二つの天秤で比べるのではなく、自らを基準にせよ、と言っているようです。
よく見ると、彼女の手元には小さなやじろべえのような天秤が吊るされています。
入れ子方式で描かれているわけですね。
彼女の持つ天秤はどちらも光を放ち、彼女はその光をじっと見つめています。
どちらにも贔屓することない、まっすぐな眼差しで。
彼女の周りには、蝶が飛び、動物たちが集まり、花が咲き乱れています。
彼女は万物の信頼を集める女神です。
逆位置になると、今度は彼女の乗る天秤が、彼女自身に蓋をするように覆いかぶさってきます。封じられた、ねじ曲げられた正義を感じます。

一瞬、「塔」を思わせる構図ですが、審判(ジャッジメント)です。
真っ先に目につくのは、一番上で笛を吹いている天使です。
最後の審判の日を彷彿とさせる象徴ですね。
この塔のように積み上げられた裁かれるべきもの、は人だけではありません。
動物も植物も含まれています。
さらに紙吹雪のように全体を埋め尽くす赤い飛沫は、世界の全てにあまねく下される審判を表しています。
その結果は今まで塔のように積み上げられてきた生き方です。
その上で天使はどんな審判を下すのでしょうか。
過去を、生き方を見直せ、というメッセージを感じます。
逆になると、飛沫が降り注ぐ破片のように思われます。全てがガラガラと崩れてくる音が聞こえるようです。


全ての命を育む源である太陽(サン)のカードです。
まず目を引くのは、中心に描かれた褐色の人物。太陽の恵みを存分に受けた健康的な姿があります。
まるでアポロンのように思われるこの人物を中心に、鬱蒼と茂る香り立つような植物たち。その陰には、幾種類もの動物たちも見え隠れしています。
上空には太陽をシンボライズした赤い球体の一部が描かれ、カード全体から熱気と生命力が伝わってくるようです。
ただ、光の裏には必ず影があり、左側には横向きに色のない伏せ目がちな人物も見られます。
この人物だけが太陽の持つ本当の意味を知っているように思われます。
実際の占いでこのカードが出た時、どちらの人物に目が行くか、で解釈は大きく変わってきます。
中央であればエネルギーに満ちた積極性を、左であれば、支えられている、という事実そのものを読み取ります。
逆位置は怖いカードです。まさに太陽の炎で全てが焼き払われる印象です。

文責 SORATO
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