催眠状態になるのに重要なのは催眠術師かそれとも本人の被暗示性?

催眠状態になるのに重要なのは催眠術師かそれとも本人の被暗示性?

テレビや映画では催眠術で人を自由自在に操っているけど、実際の催眠術師が催眠状態に与える影響はそれほどない

The mythical image of the hypnotist is, arguably, the character Svengali in George du Maurier’s 1895 novel Trilby, and the 1931 film made from it, starring John Barrymore and Marian Marsh (Kihlstrom, 1987): the eyes, the passes with the hands, the rapport with the subject, the undercurrent of sexuality (of course, Svengali is male and Trilby female), the risk of harm and the intimations of the paranormal. More importantly, though, there is the idea that the hypnotist possesses a particular personality, which affords him a special power to control others—for good and for evil. In stark contrast to this image, the literature on hypnotist characteristics, and their effects on hypnosis, is remarkably thin.

The Oxford Handbook of Hypnosis CHAPTER2
The domain of Hypnosis, revisited
p23
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MaGiくん

Googleブックスで70ページ程度は無料で読めますので、興味のある人は見てみてください

参考 The Oxford Handbook of HypnosisGoogleブックス

このスヴェンガリという人物は、イギリスの作家であるジョージ・デュ・モーリアの小説トリルビーに登場する人みたいです。

第2作である「トリルビー」は1894年に出版された。その内容はゴシップ・ホラーのジャンルに分類されるもので、当時ゴシック小説は、世紀末を迎えて再び活況を呈しており、トリルビーも大変な人気があった。絵のモデルである貧しいトリルビー・オウ・ファレルが、邪悪な音楽の天才スヴェンガリの呪いによって歌姫に変身するという物語は、大評判となった。

ジョージ・デュ・モーリア
Wikipedia
参考 ジョージ・デュ・モーリアWikipedia

興味のある人は映画もどうぞ。

催眠術師はコーチやチューター的な存在

So far as the laboratory is concerned, we assume that the hypnotist functions much like a coach, or a tutor, whose job is to help subjects to become hypnotized, and to experience hypnotic suggestions.

The Oxford Handbook of hypnosis
p23

“so far as the laboratory is concerned”と書いてありますが、一般論としてコーチやチューター的な存在だと思って良いかと思います(催眠術のちゃんとした専門書なので、まぁ、研究室に限るとか言っておかないとね)

松岡修造さんが隣でどれだけ応援してくれても本人が頑張らないとテニスが1ミリも上手くならないように、催眠術でも同じことが言えます。

催眠術と自己催眠は同じ?全く異なる性質の催眠なのか?

The idea that hypnosis involves two people, a hypnotist and a subject, would seem immediately contradicted by the phenomenon of self- hypnosis, in which there does not seem to be any hypnotist at all. At one level, we can say that there is no contradiction, because in a very real sense all hypnosis is self-hypnosis. The hypnotist can recite an induction procedure and make suggestions for various experiences, but it is the subject who must actively participate in the process; without that active participation, nothing happens. 

The Oxford Handbook of Hypnosis
CHAPTER2
p24

催眠術と自己催眠についての記述があったので、該当箇所を引用しました。

自己催眠は独りで行うのに対して、一般的な催眠術は術者と被験者の2人が必要です。

このことから両者は異なった現象だと思いがちですが、見方によっては両者は同一のモノと考えられるとしています。

独りでやるかコーチやチューター的な人と一緒にやるかの違いだけなので、大体一緒なのは、まぁ感覚的に理解できると思います。

最後の一文は先に挙げた松岡修造の例と同じです。

催眠術にかかろうと本人が積極的に思ってくれない限り、何も起こりません。

催眠状態になるには、催眠術師だけではどうしようもなく被験者との協力が重要になります。

催眠状態になるのに重要なのは催眠術師ではなく被験者本人

Surely the main reason that the hypnotist has so little impact on what goes on in hypnosis is, simply, that virtually all the action is in the subject. The importance of individual differences in hypnotic susceptibility has long been recognized (Friedlander and Sarbin, 1938)

The Oxford Handbook of hypnosis
CHAPTER2 The domain of hypnosis, revisited
p24
参考 The depth of hypnosisAPA PsycNet

催眠術についての最初の記事でも書きましたが、催眠はあくまでも個人の主観というか体験によるもののため重要なのは被験者本人です。

催眠術は本物かやらせか?催眠術のかけ方を専門書でちょっと勉強してみるわ 催眠術のかけ方をマスターしようと思って専門書で勉強してみるわ

催眠状態になるためには、被験者本人の被催眠性・被暗示性が重要な要素になります。

催眠術師の影響はそれほど大したことないんです・・・・。

被催眠性・被暗示性と最も相関する要素は何になるのか?

The strongest correlate of hypnotizability discovered so far is absorption, or the tendency to become absorbed in various sorts of sensory, cognitive and imaginal experiences (Tellegen and Atkinson, 1974; for a review, see Roche and McConkey, 1990).

The Oxford Handbook Of Hypnosis
CHAPTER2 The Domain of hypnosis, revisited
p24
参考 Absorption: Nature, assessment, and correlatesAPA PsycNet

被催眠性・被暗示性と最も相関するのは”Absorption”とされています。

日本語では夢中・熱中・はまり込むなどの意味です。

受験英語的にはよく”absorbed in”の形で暗記させられるやつです。

被験者本人が催眠術に対して興味・関心がないと催眠状態になりにくいということです。

このことはMRIペンデュラムでもバーディーさんが似たようなことを言っていました。

ペンデュラムなどを使用して観念運動が起こるかどうかで被暗示性のテストをすることが多いのは、被験者の”absoption”をチェックしているからと考えることができます。

MRI ペンデュラム by Birdie MRI ペンデュラム by Birdie

ただまぁこの被催眠性・被暗示性と”absorption”が最も相関するとされていますが、個々人レベルで被催眠性・被暗示性を予測するのは無理です。

個々人の被催眠性・被暗示性レベルを予測するのは無理です

Even the correlation between hypnotizability and absorption is still too small to permit individual levels of hypnotizability to be predicted with any confidence from personality measures.

(中略)

Other than this, we know remarkably little about hypnotizable individuals. 

The Oxford Handbook Of Hypnosis
CHAPTER2 The Domain of Hypnosis, revisited
p24-25

被催眠性・被暗示性と”absorption”が最も相関するんですが、相関係数自体は大したことないので、これで個人の催眠にかかりやすさが予測できるレベルかと言うとそうではないみたいです。

ここで言われている、”personality measures”はMMPIやCPIなどを指しています。

MMPIは日本語言うとミネソタ多面人格目録といい、精神科などで使われるスケールの1つです。

参考 MMPIWikipedia

CPIは日本語言うとカリフォルニア人格検査といい、MMPIをベースに考案されたものです。

検査としては両者基本的に似ているものになっています。

なぜこういった人格検査で被暗示性・被催眠性を予測することができないのかと言うと、そもそもMMPIやCPIのようなスケールに”absorption”やイメージ力といった要素が含まれていないからです。

Absorption and imaginative involvement simply were not represented on the scales of the MMPI and CPI; put another way, the individual differences measured by these inventories fall outside the domain of hypnosis.

The Oxford Handbook of Hypnosis
CHAPTER2 The domain of hypnosis, revisited
p24

ここまで、被催眠性・被暗示性はその人の”absorption”と最も相関することを説明してきました。

今度はじゃ、この被催眠性・被暗示性は性別と関係あるのかという疑問を持ちますよね?

その点についてThe Oxford Handbook of Hypnosisでは以下のように述べられています。

被催眠性・被暗示性について男女差は基本的にない

Despite the implications of the Svengali myth, there is no appreciable gender difference in hypnotizability (Weitzenhoffer and Weitzenhoffer, 1958), and any difference there might be should not be taken too seriously, as the literature on gender differences presents a host of interpretive difficulties (Maccoby and Jacklin, 1974; Tavris, 1992; Hyde, 2005). Stereotypically ‘feminine’ individuals are no more hypnotizable than stereotypically ‘masculine’ ones (Kihlstrom, 1980).

The Oxford Handbook of Hypnosis
CHAPTER2 The domain of hypnosis, revisited
p25
参考 【PDF】Personality correlates of hypnotic susceptibility: Needs for achievement and autonomy, self-monitoring, and masculinity–femininity.ocf.berkeley.edu

最初に述べたスヴェンガリの映画にあるように、女性の方が催眠術にかかりやすいイメージを持っている方が多いのではないでしょうか?

占いとかスピリチュアルな的なやつは女性の方が信じやすいイメージが確かにありますよね。

Kihlstromさんの1980年に発表された論文では、被催眠性・被暗示性に目立った男女差はないことが示されています。

受験英語でよく出てくる”no more than”構文になっています。

男性が催眠術にかかる程度しか女性もかかりませんよっということです。

今回紹介した内容を軽くまとめると以下のようになります。

今回の記事のまとめ

要約
  1. 催眠術で重要なのは催眠術師ではなく本人の被催眠性・被暗示性
  2. 催眠術師はあくまでもコーチ・チューター的な存在でしかない
  3. 一般的な催眠術と自己催眠は状況によっては同じ
  4. 被催眠性・被暗示性と最も相関する要素は本人のはまり込みやすさ・熱中しやすさ(催眠に興味・関心の有無)
  5. パーソナリティースケール(MMPIやCPIなど)で個々人の被催眠性・被暗示性を予測するのは現状では厳しい
  6. 被催眠性・被暗示性について目立った男女差はない

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