催眠の定義を勉強するのが催眠術をマスターする最短経路っぽい

催眠の定義を勉強するのが催眠術をマスターする最短経路っぽい

催眠の定義が分かれば催眠術の原理を理解できる

参考にする書籍は前回の記事と同じです。

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MaGiくん

Googleブックスで70ページ程度は無料で読めますので、興味のある人はチェックしてみてください

参考 The Oxford Handbook of HypnosisGoogleブックス 催眠術は本物かやらせか?催眠術のかけ方を専門書でちょっと勉強してみるわ 催眠術のかけ方をマスターしようと思って専門書で勉強してみるわ
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MaGiくん

前回は催眠が個人の経験に基づくものと勉強しました。
今回は催眠の定義をテーマにしていきたいと思います

過去の偉人は催眠について何と言っているか?

So where to start? For guidance, we note Duke Tellegen’s (1978/1979) splendidly austere rough sketch of what probably interests most of us about hypnosis: The individual’s capacity to:

… represent suggested events and states imaginatively and enactively in such a manner that they are experienced as real(p.220)

The Oxford handbook of Hypnosis
Definitions: crafting our words carefully and generously
P6
参考 On Measures and Conceptions of Hypnosis(American Journal of Clinical Hypnosis, 21: 219-237)tandfonline.com

The Oxford handbook of Hypnosisでは催眠状態には2種類の要素があるとしています。

“Hypnosis-as-product”と”Hypnosis-as-procedure”の2つです。

Arguably, there are two elements of a hypnotic situation:

‘hypnosis-as-procedure’ and ‘hypnosis-as-product’.

(中略)

We know that hypnosis (the product) is not achieved just because hypnosis (the procedure) has been administrated.

(中略)

We define the hypnotic situation in part by defining hypnosis-as-procedure. We then apply criteria to determine how confident we are that the result is hypnosis-as-product.

The Oxford handbook of hypnosis
A working definition and central themes
p6

本文中では医療で使われる麻酔と大体同じであると述べられています。

手術時などで麻酔科医が患者に麻酔を導入する際でも、「麻酔をかける手順」(procedure)と「麻酔のかかった患者自身」(product)の2種類あるのと同じです。

麻酔にかかった状態は本人にしか分かりませんが、大体寝ていますので実際にどんな感覚なのかよく分からないですよね。

麻酔に限らず、死(death)についても似たようなことが言えるかと思います。

第三者から見て「死んだかどうか」の判定をしているのであって、死んでいるとされている当人が「本当に死んでいる」かは分かりません。

「臨死体験」みたいな話は巷でもいっぱいありますが、死んだ人の感覚は実際に自分が死んでみないと分からないはずですよね。

正しい催眠術のかけ方の手順はどうなっているのか?

催眠術のかけ方に関して色々な本で、様々なことが言われているかと思います。

民間のよく分からない催眠療法のやり方などを信用するのは個人の自由ですが、今回はThe Oxford Handbook of Hypnosisに書かれている学術的に証明された「正しい」催眠術のやり方を紹介していきます。

本文の中では”APA Division 30″の定義が紹介されています。
Division 30について知らない方は下記のリンクを参考にしてください。
APAのホームページになります。

Division 30: Society of Psychological Hypnosis is devoted to exchanging scientific information, advancing appropriate teaching and research, and developing high standards for the practice of hypnosis

American Psychological Association(APA)
参考 About APAAmerican Psychological Association

このAPA-Division-30による催眠術の定義を引用すると

Hypnosis typically involves an introduction to the procedure during which the subject is told that suggestions for imaginative experiences will be presented. The hypnotic induction is an extended initial suggestion for using one’s imagination, and may contain further elaborations of the introduction. A hypnotic procedure is used to encourage and evaluate responses to suggestions. When using hypnosis, one person ( the subject ) is guided by another ( the hypnotist ) to respond to suggestions for changes in subjective experience, alterations in perception, sensation, emotion, thought or behavior ( Green et al.,2005, p.263)

The Oxford Handbook of Hypnosis
Hypnosis-as-procedure ( What is necessary? )
p7
参考 Forging ahead: the 2003 APA Division 30 definition of hypnosisPubMed

催眠術の定義について色々書かれていますが、要約すると催眠術の手順というものは催眠術師(the hypnotist)の暗示によって被験者(the subject)自身の経験や知覚、感覚、感情や行動などを変化させることです。

この催眠術にかかる人の変化をより高めるためには催眠術師の暗示が必要で、この暗示に対する反応を効果的に高めるのが催眠術の手順(A hypnotic procedure)になります。

このことについては「催眠術の教科書」でも似たようなことが言われています。

「催眠術の教科書」を読んで催眠術のかけ方を覚える

「催眠術」「催眠誘導」「催眠法」と、名前は違えど、いずれも人の意識を普段の状態から催眠状態へと導く過程を指すものです。つまり、「意識の誘導」です。

そして、誘導の際、気にかけておきたいのが、リズム。

(中略)

当然、催眠誘導は、無意識をリードするものですから、一度リズムを崩しただけでもかなりのデメリットになります。

これも初心者の方によくいるのですが、途中で言葉(暗示)を言い間違えてしまい、一瞬頭の中が真っ白になって、次に何をしていいのか分からず黙ってしまうことがあります。すると、順調についてきていた被験者の無意識はリズムは崩してしまい、催眠がそこから深くならなくなったり、ときには催眠から覚めてしまうこともあるのです。

誰でもできる催眠術の教科書 p55-56
催眠誘導研究所所長 林貞年
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マジックでも徐々に現象を強めていく手順が一般的だと思います。

最初に見せた手品よりもどんどんショボいやつを披露していったら基本ヤバイですよね。

これらから分かることは、催眠術の正しい手順とは暗示の効果を適切に高めていく方法のことであるというものです。

次は催眠術をかける手順において必要なものは何かを考えていきます。

相手に催眠をかけるためには2つの構成要素が必要

1. Introduction: the person administering the procedure tells the subject that what is to follow involves suggestions for imaginative experiences. This introduction might be as simple as: ‘I am going to ask you to imagine some changes in the way you think and feel. Is that OK? Let’s see what happens’.

2.The first suggestion: the definition stipulates that the first imaginative suggestion is administered and operates as the induction. This is an exceedingly important point. If the committee had merely stated ‘and then the hypnotic induction happens’ it would be begging the question: so what exactly is a hypnotic induction? The committee elegantly operationalized the induction as the first suggestion after the introduction.

The Oxford Handbook of Hypnosis
1.4.2. Hypnosis-as-procedure
p7
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MaGiくん

催眠術をかけるためには、催眠導入と最初の暗示(=催眠誘導)がとても重要でこれら2つが必須の構成要素です

日本語で何と訳せば良いのか分からない(日本語の適切な用語を知らない)ので、ここでは”introduction”を「導入」とし”First suggestion = Induction”を「誘導」と訳すことにしています。

「人は見た目が9割」みたいな本があったと思いますが、見た目と同じように催眠術をかけるためには最初の立ち上がりが1番重要です。

ここでつまづくと相手に上手く催眠をかけることができません。

このことに関しても「催眠術の教科書」で同じようなことが言われています。


相手に与える第一印象は催眠に大きく影響する

前にも述べましたが、実際、催眠術のかけ方というのは、大したことをするわけではもなく、いくつかのポイントを押さえていれば誰でもできるものです。

肝心なのは、催眠を開始する前に、いかに相手をかかりやすい状態にするかです。

そのためには、まずあなた自身が被験者に対してどんな印象を与えるかを考えなくてはいけません。

誰でもできる催眠術の教科書p80
催眠誘導研究所所長 林貞年

第一印象が催眠に大きく影響するので「威光暗示」を使用したり、セミナーなどの形式にして厳かな雰囲気を演出し催眠がかかりやすい状況にする必要があります。

「威光暗示」というのは、簡単にいうと「肩書き」のことです。

心理学などの本でも言われていることが多いです。

例えば「天才詐欺師のマーケティング心理技術」ではこのように書かれています。

人を選べる場合は、誰しも、その分野での信用が権威によって裏付けられた人間に信頼を置くはずだ。

(中略)

1階の居間の電気配線をやり直すとしたら、次のうちどちらの人間をより信頼するだろうか?

 電気技師  アーニー・ジョーンズ

 電気技師長 アーニー・ジョーンズ

パイプが壊れてバスルームの床に水があふれ出しているとき、うまく修理できると思うのは、次のうちどれだろうか?

 配管工   ウェンデル・スミス

 主任配管工 ウェンデル・スミス

(中略)

人々に認められた権威があれば、つじつまの合わない要素は見過ごされ、どんなにとんでもない能書きでも受け入れられるのだ。

天才詐欺師のマーケティング心理技術 p34-35
ダン・S・ケネディ チップ・ケスラー

最近だと「錯覚資産」という概念が話題になったりしていますよね。

ちなみにこの本の題材になっている人物、ジョン・R・ブリンクリーは実在の人物です。

アメリカでは有名な人みたいで、小説でいうとフィッツジェラルドのグレイトギャツビーみたいな感じです。

アマゾンプライムでジョン・R・ブリンクリーを題材にした映画があるので気になる人は観たら方が良いと思います。

Amazonプライム・ビデオ

マットデーモン主演で映画化されるみたいな話が一応あるみたいですね。

アメリカではもう公開されているのかな?

「ジェイソン・ボーン」のマット・デーモンが実在した人物を描く新作「偽医者」Charlatan に主演する。

この映画はポープ・ブロックの同名小説を原作に、1918年にクリニックを設立した実在の偽医者ジョン・R・ブリンクリーを描くもの。彼は医療資格がないにもかかわらず、性の問題を抱える男性にヤギの睾丸の移植する治療をラジオで宣伝。これが人気を呼んでクリニックは繁盛したが、この移植手術には効果がないだけでなく、感染症による死亡者が続出した。

SCREEN ONLINE
参考 「ジェイソン・ボーン」のマット・デーモンが実在した人物を描く新作「偽医者」Charlatan に主演するSCREEN ONLINE

催眠術の手順で必要な構成要素をこのセクションでは説明しました。

最初に行う催眠導入と1番はじめの暗示(=催眠誘導)が催眠術に必要な2つの構成要素であることがここでのまとめになります。

次のセクションでは催眠術のかけ方でそれほど重要でない(必要事項ではない)ことは何なのかを扱います。

相手に催眠をかける方法で必要ではないことは何か?

スケール催眠誘導に使う暗示催眠誘導の後にかける暗示
ハーバードグループ(HGSHS:A)目を閉じる腕・手を上げる
スタンフォードA(SHSS:A)目を閉じる腕・手を上げる
スタンフォードB(SHSS:B)目を閉じる腕・手を上げる
スタンフォードC(SHSS:C)目を閉じる腕・手を上げる
スタンフォードProfile:Ⅰ(RSPSHS:Ⅰ)
腕・手を上げる知覚変化
スタンフォードProfile:Ⅱ(RSPSHS:Ⅱ)
腕・手を上げる知覚変化
スタンフォードArm Levitation(SHALIT)腕・手を上げる腕・手を上げる
CURSS(Modified)知覚変化腕・手を上げる
ワーテルローグループスケール目を閉じる腕・手を上げる

*上記のチャートはThe Oxford Handbook of hypnosis: A working definition and central themes Table1.1: The ‘induction’ suggestion and the first test suggestion of common research scales(p8)を日本語訳に改変したものです。
**HGSHS: A, Harvard Group Scale of Hypnotic Susceptibility, Form A (Shortchanged and Orne, 1963); SHSS: A, Stanford Hypnotic Susceptibility Scale, Form A and SHSS: B, Stanford Hypnotic Susceptibility Scale, Form B ( Weitzenhoffer and Hilgard, 1959); SHSS: C, Stanford Hypnotic Susceptibility Scale, Form C ( Weitzenhoffer and Hilgard, 1962); RSPSHS:Ⅰ, Revised Stanford Profile Scale of Hypnotic Susceptibility, Form Ⅰ and RSPSHS:Ⅱ, Revised Stanford Profile Scale of Hypnotic Susceptibility, Form Ⅱ ( Weitzenhoffer and Hilgard, 1967); SHALIT, Stanford Hypnotic Arm Levitation Induction and Test ( Hilgard et al.,1979); CURSS, Carlton University Responsiveness to Suggestion Scale-Modified ( Comey and Kirsch,1999); WGSHS, Waterloo-Stanford Group Scale of Hypnotic Susceptibility ( Bowers, 1998).

上のチャートは各大学の催眠術に関するスケールのまとめになっています。

「腕・手を上げる」という暗示が催眠誘導や誘導の次に行われる暗示で最も使用されていることが分かります。

「目を閉じる」暗示は催眠誘導で使われるものとしては1番になっています。

ですので、これから催眠術をかける際には最初の催眠誘導では「目を閉じる」か「腕・手を上げる」暗示をかけるのがベターだと思います。

「腕・手を上げる」という暗示をした後に「目を閉じる」暗示に入るパターンはどのスケールにもありませんので、催眠誘導で「腕・手を上げる」ように暗示をかけていくのであれば次の暗示はさらに腕・手を上げてもらうようにするか、知覚変化を起こす暗示をかけていった方が良いです。

この辺りは術者自身の好みというか催眠術をかける相手の性質にも依りと思うので、とりあえず「目を閉じる暗示」、「腕・手が上がる暗示」と「知覚変化を起こす暗示」の3つが重要だと理解しておけばオッケーかと思います。

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